SYMPOSIUM_2
アメリカ・イスラム・中国 新政権の日本外交を語る
9・11から5年——激動の国際情勢を多角的に分析
嶌
その辺は、のちほど外交のところでやりたいと思います。さて五百籏頭さん、一方でいま、アメリカに対するさまざまな見方も出てきました。ヨーロッパでは先日、米欧の首脳会談が開かれ、そのときブッシュ大統領はヨーロッパの記者たちにいろいろと質問された。たとえば「世界を不安定にさせる要因はアメリカだと思うが…」と何度も質問された。そして「世論調査でも 60 % ぐらいの人がそう思っている」と言われて、ブッシュはついに怒ったわけです。
それから、中南米でもベネズエラだけでなく、ブラジル、チリ、アルゼンチン、あるいはウルグアイと、反米的な政権が増えてきました。また、この間の非同盟首脳国会議は必ずしもアメリカ支持ではなく、むしろ批判的な論調も起こっています。米中関係は、ポールソン財務長官がすでに 70 回ぐらい中国に行っていることから見ても関係は非常にいいと思いますが、その一方で、アメリカ国内でもブッシュ政権の支持率は非常に落ちて、中間選挙も危ないという。
いまブッシュ政権は世界をどう見て、今後は何をしようとしているのでしょう。私は長年サミットを見てきましたが、今までは、たとえば 70 年代は石油危機をサミットで対応したとか、あるいは 80 年代は対ソ関係、90 年代は民族問題というように、サミットでの成果が具体的にあった。ところが、21 世紀に入る直前くらいからはアメリカの一極支配となってきて、国連やサミットなどは案外無視されてしまっています。つまり、そうしたやり方が行き詰ってしまったのか、あるいはもう一度、アメリカは別の方策を採ろうとしているのか、そのあたりをどうお考えでしょうか?
五百籏頭
嶌さんは、サミットを日本でもっとも長期に渡ってカバーされたジャーナリストですよね。ただ、確かに、かつてサミットではいろいろな問題に対処してきたけれども、その中心はやはりアメリカでした。日本は表立って楯突くこともないし、ときにヨーロッパ、なかでもフランスとは結構、緊張感に満ちたやりとりもありました。しかし、最後のところではやはりアメリカを中心に、難しい問題に対して「結束して頑張ろう」と、大体はそういうことでした。
ところが、世界におけるアメリカの信認には微妙なバランスがあります。いまは中国の人ですら「 80 % の人が、アメリカが好き」とのことですが、その一方で「 60 % くらいの人は、封じ込めようとする脅威感を感じている」という。つまり“脅威感があるからこそ関係を大事にする”というあたりが、さすが中国だと思うのです。
実際、そうでなければおかしい。ヨーロッパもなんだかんだと言いますが、やはりアメリカを大事にしています。また文化的には圧倒的に、世界中が「アメリカが大好き」です。ところが、アメリカが覇権国として世界の運営にあたるとき、とくに権力行使に傾くときには非常にアレルギーを感じる。つまり「パワーポリティックスにおけるアメリカは好きではない」という見方。あるいは「自分にとって脅威だ」という思いが、アメリカに対しては常にあるということです。
そして、そういうなかであってもアメリカがリーダーシップを発揮できたのは、以前アメリカという国は、力があってもやたらとそれを使うことなく、むしろソフトパワーを大事にしてやってきたということです。女性的な言い方としますと“共感を築くリーダーシップ”ということに案外熱心なところがあった。
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2006年12月4日(掲載)
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