SYMPOSIUM_2
アメリカ・イスラム・中国 新政権の日本外交を語る
9・11から5年——激動の国際情勢を多角的に分析
五百籏頭
国分さん、ひとついいですか? いかに中国にとってアメリカが大事か、パワーポリティックスから見ても、文化の方面から見ても「よくわかる」と。すると、「中国から見た日本はどうなのか?」ということですが…。反日的な中国の人はここ数年、とくに靖国問題などで日中関係が断絶して、今まで築いてきたものがガタガタになっているのを見て「いい気味だ」と言います。そして「中国はそんなに損をしていない」「日本のほうがちょっと損している」と。そういう意味では、日本との関係が悪くなっても中国は困らない、損をするのは日本だというような反日派もやはりいると思うんです。ところが、胡錦濤さんの筋はどうやら「日本との関係もやっぱり大事にしたい」とお考えのようです。そうすると、中国が対日関係を大事にしたいロジック、あるいは国益とは何でしょうか?
国分
もともと中国という国は歴史的に見ると、アメリカを意識して日本に近づいてくるんです。また、この背景としてひとつあるのは「日米安保をできるだけ離間させたい」という発想がなかなか無くならないからだと思います。しかし今日の状況を見れば、日米を離間できるなんて、もはや中国の人も思っていない。ただ、五百籏頭さんが指摘したような現象は起こっています。今まさに日中の接近が起こっているわけですが、中国国内のインターネット上の議論を見ると、あるいは国際関係が専門の知識人たちの議論を見ると、今まさに五百籏頭さんが言われた「米中関係がよければ、日中関係は米中関係の従属変数」だという議論はあります。つまり、アメリカとの関係がよければ日本は二の次という、こういう議論が結構多いです。
嶌
小泉さんと似たようなことを言っていますね。日米がうまくいけば日中やアジアとの関係も好転すると……。
国分
つまり日米関係がよければ、日中関係や日韓関係は二の次でいいと。ただ、この議論は、中国では主流ではないと私は思っています。しかし、そういう議論が結構あることも間違いない。
しかし、それでもやはり日本の重要性はものすごくある。これを今までの経緯から考えてみると、たとえば靖国問題への言及回数は、江沢民サイドより、胡錦濤サイドのほうがものすごく少ない。そういう意味では、もちろん歴史的にも中国と日本との繋がりは深いですけれど、胡錦濤はそれ以外にも何らかの思いがあるはずです。もちろん利害関係もあるでしょうけれど、日本と上手くやりたいという思いがあるはずです。
五百籏頭
それは経済技術力ですか? 日本を重視すべき理由とは…。
国分
本当の知識人たちは「日本がいかに素晴らしいか」が実はよくわかっている。日本の技術がいかにすごいか、日本人はいかに秩序があるか……等々。そして、日本に来ると、皆さんびっくりなさるんです。「こんなに空がきれい!」とか。私たちからすれば「えっ、空がきれい?」と思う(笑)。しかし彼らは、道路を見ても「こんなに秩序よく皆が横断歩道をちゃんと渡って、交通ルールを守っている!」となるわけです(笑)。
こういう感覚を実際に味わった中国の専門家たちは、日本のよさをものすごく知っています。ところが、靖国問題とか反日の動きがインターネットなどに頻繁に登場するものですから、一般大衆の人々の手前「日本」という国の名前を出されると、彼らもやりにくい。経済協力はよいけれど、「日本」の名前が出るのはちょっとまずいという。
でも最近は、それも随分抑えられています。また、そうした感覚は逆に、むしろ日本の側にもできてしまっている。たとえば日本人がビジネスの交渉をするときに、私たちはこうだけど「向こうは何を考えているのかなぁ」と余計なことまで考えてしまう。たとえば「日本だけど、我慢してね…」とか、そういう感覚をもつことがある。しかし、日本はそれほど嫌われているわけでもない、と私は思います。日本に対して、ある種の畏敬の念も持っているはずだと思います。
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2006年12月4日(掲載)
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