中部大学の和崎聖日さんの報告「格闘大国ウズベキスタンのクラッシュと生活文化—日本との交流も含めて—」では、これまで日本であまり脚光を浴びて来なかった2点が大きくアピールされました。第1に、例えば柔道においてウズベキスタン代表選手が世界的な好成績をおさめており、ウズベキスタンが格闘大国であることが指摘されました。そして、同国が格闘大国である由縁は元来伝統遊戯として存在するが、ソ連時代に近代スポーツ化され、独立後に広く国際化した民族格闘技クラッシュにあることが紹介されました。第2に、この国際化したクラッシュ大会には、日本人柔道家のクラッシュ挑戦の歴史があることが紹介されました。最後に、このクラッシュ競技を通した日本とウズベキスタンの交流のいっそうの発展を祈願することで、和崎さんの報告は締められました。
続いて、京都外国大学の木村暁さんから、 過去におけるウズベク相撲(クラッシュ)の競技としての様態、および、死後に聖者化されたヒヴァの相撲取り、パフラヴァーン・マフムード(1322年没)が後世に担った政治・社会的役割の具体相を歴史史料に依拠して跡づけた報告がなされました。木村さんは、ウズベク相撲では古くから学知と精神性が重んじられ、ゆえにこそ相撲が教育・修養の一手段としてウズベキスタンの社会生活のなかに深く根づいてきたとの見通しがえられたのではないか、と考察を述べられました。
報告、告知、特集企画と盛りだくさんの内容でありながら、質の高い報告がそろい、ご来場の皆様には満足していただけたのではないかと思います。
(寄稿者:トークの会 in 名古屋(近藤 行人))
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