ウズベキスタン文化交流展にボランティア参加して
ー 横浜で体験したもうひとつのオペラ ー
協会からのメールでボランティア募集を知った。「追憶 ナボイ劇場建設の記録」を読んで建設に従事された永田元隊長はじめ多くの方々のご苦労や苦境に直面しての様々な工夫に大いに関心を持ち、それに焦点を当てた講演が交流展の目玉でもあり参加した。
嶌会長による講演「シルクロードの日本人伝説・ナボイ劇場建設秘話」の開演が近づき、準備のために早々に会場に行くと既に永田隊長がお見えになっていた。見ず知らずの私に丁重な挨拶をなされ、恐縮するとともに大きな感銘を受けた。
いよいよ講演が始まった。講演は最後にオペラ「夕鶴」上演でクライマックスを迎える。ナボイ劇場建設秘話もヴェルディの手にかかれば感動的なグランドオペラである。そのあらすじは;
(プロローグ)満州での苛烈な戦いとソ連軍の侵攻と敗戦 〜
(第 1 幕)旧日本軍人捕虜のシベリアへの移送と困難な労働の日々 〜 そんな中での淡い恋や苦境の中で工夫した楽しみ、そして決して失わない技術に対する自信と誇り 〜 劇場の完成と夢にまで見た日本への帰国 〜
(第 2 幕)歳月が経過。激烈な地震が発生。タシケントの大半が廃墟と化す中で激震に耐え、奇跡的に無傷のナボイ劇場。自然によみがえるウズベクの人達の記憶にあった元抑留者たちの凛とした態度への敬意と驚き 〜
(フィナーレ)東西冷戦構造の終結と、半世紀を過ぎての元捕虜と劇場との再会 〜 自ら建設した劇場を舞台に実現したウズベキスタンと日本の協力による『夕鶴』公演の感激のクライマックス。…タシケントの高い空に夕鶴が舞った…。
会長の声も思わず熱を帯び、満員の会場のあちこちにハンケチで目頭をおさえる聴衆も。まさに劇的オペラによる歴史ドラマの再現であった。講演に引き続き永田隊長への質問と回答の機会が持たれた。永田さんは言葉多く語らないが、密度の濃い言葉のひとつひとつが印象的である。
会場を出ると夕闇を迎えた横浜の港と街の明かりが美しかった。西の空、かすかな残照の先につながるタシケントの高い空に思いをはせ、悠久の歴史の流れのひとこまで起きた熱いドラマの余韻にひたりながら駅へ歩を進めた。
寄稿者:昔農 英夫
2005年4月27日(掲載)
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